掲示板

2016年11月11日

献立紹介

【ニガタケの天ぷら】鹿児島県・種子島

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ニガタケは春と秋に種子島の山深くで採れます。名前は苦いと付きますが、苦味はほとんどなく、アク抜きもせずに食べる事ができます。
島民にこよなく愛される山の幸をどうぞお召し上がりください。

文 長尾 智史
写真 幸 秀和

2016年11月11日

献立紹介

【インギー地鶏の手羽元甘辛煮】鹿児島県・種子島

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一八九四年漂着した英国帆船「ドラムエルタン号」の乗組員を、
種子島の人たちは「インギー人」と呼び、手厚く保護しました。その謝礼に贈られた鶏が「インギー地鶏」の由来です。
引き締まった身を柔らかくなるまで、じっくりと甘辛く煮込みました。
種子島の人たちのやさしさがもたらした恵みを味わってください。

文 長尾 智史
写真 幸 秀和

2016年11月11日

献立紹介

【ざこ(きびなご)の塩煮】鹿児島県・種子島

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種子島では九月一日から、ざこ漁が解禁となります。
秋が深まるにつれて脂がのり大きく育ちます。今回は島らしく「塩煮」。
塩とほんの少しのお醤油でサッと煮ています。秋の海の風味を味わって下さい。
民宿「ひばり」さんに教えていただきました。

文 長尾 智史
写真 幸 秀和

2016年10月31日

お知らせ

営業時間変更のお知らせ

11月1日(火)18:00〜22:00(L.O.21:00)
棚卸し作業のため、ディナータイムからの営業となります。

ご来店を予定されていた皆様には
ご迷惑をおかけいたしますが、
宜しくお願い致します。

2016年10月23日

行商日記

行商日記 第27回

ぼくは彼女の話の続きに耳を傾けていました。

「私が一週間ほど夏休みをとって会社に出勤したら、もう先輩の机には何もない状態でした。周りの社員も理由を知らないみたいで。もっと上の役職なら知ってるかもしれないですけれど」
「じゃあ、まだ上の人には聞いていないんですね?」
「聞けば教えてくれるかもしれません。でも、そういうことを気軽に聞けるような雰囲気の会社じゃないんです。分かっていただけないかもしれませんが」

おそらく色々と気を遣わなければいけない会社なんだろうな、と彼女の表情から察しました。会社内での言動だけでなく、きっと外見にも同じように気を配らなければいけないのだろうと、彼女の上品なスーツ姿と控えめながらも隙のない化粧を見てそう感じました。

「その先輩とはそれっきりですか?」
「ええ。それで、わたし海士町のことを調べてみたんです。役場や観光協会のホームページを。そして、調べているうちに離島キッチンのホームページにたどり着いたんです」
「それで、今日来て下さったんですね」
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ぼくは、ふと思いついたことを口にしてみる。

「ちなみに、その先輩の携帯電話はどうですか?」
「実は、ここに来る前にかけてみたんです。でもつながりませんでした」

彼女はとても疲れているように見えました。そして、恋愛話じゃないと言いながらも、彼女はきっとその先輩のことが好きだったんだろうなと感じました。好きな人が何の前触れもなく消えてしまったら辛いだろうと、ぼくも自分の胸がキュッと締めつけられるようでした。

「ずっとここで営業されるんですか?」と彼女は話題を変えました。
「ひとまず一週間くらいは。でも、ご覧の通り全然売れないので、場所を変えるでしょうね」
「次の予定は決まっているんですか?」
「いや、まだですね」

彼女が先輩の姿を探して途方にくれているのと同じように、
ぼくも販売場所や今後の行商の成り行きに関して暗澹たる思いを抱いていました。

そして、彼女は「また、どこかで」という言葉を残し、去っていきました。いなくなった後も彼女の余韻のようなものが消えかけた炭火のようにくすぶっています。

それから半年後、ぼくは彼女と再会することになりますが、
その時は、ただただ白昼夢を見ているような不思議な気持ちでした。

文 佐藤 喬
写真 幸 秀和

2016年10月11日

離島入門

離島入門 第10回 食材探しの旅 利尻島3

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稚内からフェリーでおよそ 3 時間半。 利尻島・鴛泊(おしどまり)港に船が着きました。

空港から出て外気を吸った時、 島ならば船から港を降りてその土地空気に触れた時、
旅をしているんだなと改めて実感します。

冷たかったり湿っていたり、 暑かったり寒かったり。 それまでの日常とは違う感覚が これからの旅を予感させます。

その日の利尻は 6 月の割に涼しくて 湿り気のない、すきっとした空気でした。 しとしと雨が降り、島中央の利尻山には雲がかかっていたというのに その街並みから活気をなんとなく感じたというのが最初の印象です。

「やあ、よろしく」

港に降りて最初に声をかけてくれたのは、 利尻町役場の佐藤さん。
事前に連絡を取り熱心に島の情報を伝えてくれた方です。 シンプルで張り詰めていないその挨拶がかえって自然で、私は安心して、すっと島に降りていくことができました。

到着日の晩は、佐藤さんが呼びかけてくださり、 早速利尻の方々と島の食材を味わうことに。 案内していただいた居酒屋さんのメニュー表を開くと、 たくさんの狙っていた食材、聞いたことのない食材のメニューがずらりと並んでいます。

メニュー選びの瞬間というのは、とてもワクワクします。 今晩の食卓をいかなる料理で彩るか、戦略を練る。 定番もの、食べたことのないもの、直感で気になったもの… 利尻の食への門戸が開かれて、脳内でひとり、今宵のラインナップ構想を練り始めた時。

「よーしじゃあ、端から全部食っていくか!な!」
「初めてならこれも食べなきゃ」
「ちゃんちゃん焼きは外せないなあ」

利尻の方々は私をよそに、すごい勢いでメニューを次々に頼んでいきます。 唖然としていると、 「ちょっと辻原さん何してるの、メモ!あとカメラ用意!」との声。

ワイワイと盛り上がり、私は言われるがまま、食材の情報を記録します。
今晩の食卓の主導権は完全に握られた。でも、頼もしくて、楽しい。
テーブルの上にはずらっと利尻の食が並びます。
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・ほっけのちゃんちゃん焼き…北海道本土では鮭を使うのが有名だが、利尻ではホッケを使うのが一 般的。味噌とねぎをのせて焼く。見た目のインパクト 。
・ほっけのかまぼこ…「ほっけは買うものではなく、もらうもの。」ほっけをすり身にして揚げる。各家庭で味付けが異なる。
・ぎすこ(ギスカジカの魚卵)…見た目はたらこのよう。濃厚な味。
・ソイの刺身…白身。脂がのっている。噛むほど旨味。
・ホヤの塩辛…ほのかな甘み、コリコリとした食感。

瞬きもせず食材を眺め、味わい、ひたすら食材のメモをとって利尻の方々とお話をする夜は、ワクワクし気分も乗ってきます。

「どうだ~利尻の食は?」
「おいしいです!!!」

相当な量の食事に舌鼓を打ち続ける私の姿は、 周囲を驚かせ、
「この子にもっと食べさせなければ」という、 まるで育ちざかりの高校生に対するような空気感と奇妙な展開を生み出ました。

「他に食べきゃならないのは…。
そうだ、例の『おにぎり』はどこで食べれるんだっけか?」
「あー、ムネのとこだな。」
「よし、行ってみよう!」

ムネのとこ?疑問を抱えつつも未知なるおにぎりを目指し、お店を後にした夜更け。この後、私は驚きの食に出会います。

写真 文
辻原 真由紀

2016年10月11日

行商日記

行商日記 第26回

神田の路地裏での夜更け過ぎ、鍾乳石から水がしたたるようなスピードで
彼女はポツリ、ポツリと昔のとある出来事について語りはじめました。

「昔、会社の先輩に海士町出身の男性がいたんです」と彼女。

過去の恋愛話かな、と思った時、彼女はぼくの思考に先手を打つようにして
「でも、恋愛とかそういう話ではないんです」と断りをいれました。

「三つ上の同じ部署の先輩でした。普段はすごく寡黙で、黙々と仕事を片付けていく職人タイプで、見た目も男っぽいというか、漁師さんがスーツを着ているみたいでした」

彼女は氷の溶けかかった喜界島をちょっと口にして話を続けた。

「ある日、その先輩の机の上にきれいな海の写真が飾られてあったんです。机の上に写真を飾るようなタイプには見えなかったので不思議な感じがしました。会社の女性社員の中でもその写真が話題にあがっていたし、ちょっとした好奇心もあって私から聞いてみたんです」

「綺麗な写真ですね、どこの写真ですか?」
「これ?地元の写真」
「地元ってどこなんですか?」
「島根。隠岐って知ってる?」
「なんとなく聞いたことはありますね。場所はすぐに出てこないですけど」
「えっとね(メモ用紙に簡単な日本地図を書いて、場所の説明をする)、ここらへん」
「島のご出身なんですか?」
「うん、海士町っていう島なんだ」
「あまちょう?」
「海に武士の士と書いて、あまって読むんだ」

「海士町っていう言葉をいう時、先輩がニコって微笑みました。普段、あまり先輩の笑顔を見たことがなかったので、いい場所なんだろうなと思いました。結局どういう理由で写真を飾ってあったのかは聞けなかったんですけれど、あの時、聞いておけばよかったと後悔しています」

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彼女はふたたび一息つくようにして喜界島を口にしました。

「···後悔?」とぼくは最後に言った彼女の言葉をつぶやきます。
「いなくなってしまったんです。ある日、突然。何の前触れもなく」

空は先ほどの雨天から一転して、星が見えるほどに澄み渡っていました。
そして、ぼくはその空をチラリと眺め、彼女の話の続きに耳を傾けていました。

文 佐藤 喬
写真 幸 秀和

2016年10月05日

献立紹介

【隠岐のサザエ混ぜご飯】島根県・隠岐島(知夫村)

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知夫村産のサザエと野菜、きくらげ、さつま揚げを甘辛く炊いたものをご飯と混ぜ合わせ、ちらし寿司のような味わいに仕上げました。
隠岐の豊かな海で育ったサザエは、アラメが好物で、柔らかく磯の香りが強いのが特徴です。お好みで生山椒をのせてお召し上がりください。

文 有田 弥生
写真 幸 秀和

2016年10月05日

献立紹介

【キンニャモ漬け】島根県・隠岐島(海士町)

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名前の由来は海士民謡の「キンニャモニャ」。
両手のしゃもじを打ち鳴らして踊るユーモラスなこの民謡は、島民の誰もが踊ることが出来ます。
干し大根をベースに色々な野菜とスルメを醤油漬けにした漬物で、ポリポリとした食感がクセになります。海士町農業加工場のみなさんが、平成4年に開発しました。

文 有田 弥生
写真 幸 秀和