ご挨拶

「離島」という単語を目にしたとき、みなさんはどのような情景を思い浮かべますか?おだやかな波間にただよう漁船と波止場。真っ白な砂山とエメラルドグリーンが広がるビーチ。自然をうやまい、神を信じる島人の姿。そして、自生する野草や豊富な海藻、海産物の数々。

古代より全国の島では、それぞれの島がもつ気候や風土を生かした食文化を育んできました。佐渡の「いごねり」、隠岐・海士町の「こじょうゆ味噌」、対馬の「ろくべえ」、粟島の「わっぱ煮」など。食文化は「海」が中心と思われがちですが、島によっては「山」の文化が育まれている地域もあります。

例えば、対馬は山が多く耕作地が少なかったため、サツマイモのでんぷんを効率よく保存するために「セン」という非常に手間のかかる保存食が生まれました。そして、その「セン」で作る郷土料理が「ろくべえ」です。

また、隠岐・海士町では元々醤油の文化がなく、代わりに「こじょうゆばな」と呼ばれる麹を用いた「こじょうゆ味噌」を調味料として使ってきました。焼きおにぎりやさざえのつぼ焼きにも非常によく合い、今もなお島民に愛されています。

島の食事を純粋に味わって頂くことはもちろん、その食の背景にある「文化」「歴史」「物語」も一緒に楽しめるお店として、わたしたちは離島キッチンを育てていきたいと思っています。

ちなみに、離島キッチンは島根県海士町の観光協会と北海道・利尻島のNPO法人 利尻ふる里・島づくりセンターが運営しています。わたしたちは、自分たちの島だけでなく、他の島の食材やお料理もご提供しています。そうすることで、全国の島どうしが手をつなぎ、都道府県の垣根を越えたつながりを全国の島の方々やお客さまと共有できるのでは、と夢見ています。


さいごに。

お店に足を運んでいただいたお客さまはもちろん、島の食材、食文化を育んできた自然と島の先人たちに感謝の意を込めて、ごあいさつとさせていただきます。