2017年がやってきました。
新年の楽しみといえばおせち料理にお雑煮に。
もちろんそれもそうなのですが、
私が1 番楽しみにしていたのは、年賀状です。
昔からこの時期だけは郵便配達員さんがやってくる物音を聞きつけて、
我先に家のポストの中身を見に行ったものでした。
インクのにじみやその人の書く文字の特徴、
漢字書き間違いを消したような跡に至るまで
些細なことすべてがメッセージを語りかけます。
コミュニケーションツールが多様化した今では、EメールやSNSが主流です。
私もよく使いますし、いまもそのおかげでこうして離島入門を皆さんにもご覧いただけているわけです。
が、それでもやはり手書きというのは良いなあ、と思うことがあります。
以前、神楽坂店にこんなお客さまがいらっしゃいました。
とある日の晩、その方はとても楽しそうに お二人でお食事をしてお帰りになりました。その片付けの時、私はテーブルにメモ書きを発見しました。
そこには一言「拍手!」とありました。
忙しい店内の様子を見て、話しかけずに敢えてメッセージを置いて言ってくださったのだと思います。「拍手」という動作ひとつとっても、涙を流しながら感動する拍手や、頷きながら同意を込めてする拍手、つまらなそうにする形だけの拍手など、いろいろな拍手がありますが、その文字からはなんとなく、お客さまが自然体で無邪気に拍手している様子が浮かびました。
たったこれだけのメッセージが自分を勇気づけてくれました。
手紙には、紙を前にして届ける相手のことを考えた時間が確かに存在します。メッセージに加え、書き手が届けたい相手のために割いた時間も込められた贈り物のようにも思えます。
私は離島キッチンのお料理も、手紙と同じだと思っています。一品一品、その料理が紡ぐ島の歴 史や人々の生活に向きあい、その時間が感じられる料理をこれからもお届けできるよう今年も取り組んでいきます。
本年もどうぞよろしくお願いします。
文 辻原 真由紀
写真 幸 秀和