2016年12月12日
離島入門
離島入門 第11回 食材探しの旅 利尻島4
たどり着いた先、「ムネのところ」とは、「TSUKI」という、利尻出身の店主のムネさんが営むお店でした。さまざまな商品を開発して夏場は漁業にも携わり精力的に活動をしておられます。バーカウンターとお座敷のおしゃれな空間です。
島の人同士は殆どが顔見知りなので、どこかお店に行くにしても、店の名前ではなく、「○○さんのところ」といういい方になるのも島らしいなあとしみじみ感じます。
「ムネ、『島のりのおにぎり』を一つ。この子が一個食うから。」
と利尻町の佐藤さんが注文してくれました。
運ばれてきたのはかなり大きなまん丸のおにぎり。周りにはびっしりと醤油で濡らした「のり」が巻いてある。この海苔は醤油にビタビタに浸すのがうまいんだよ、と教えてもらう。
でも、見た目からすると、普通のおにぎりでは?これが私に是非食べてもらいたい逸品?と少々訝しく思いながらも食べてみる。
「!」
口の中に広がる香り、独特の風味。お醤油の水分と反応してますます風味が引き立つ気がするし、いつも食べている海苔とは明らかに違う感動。
聞いてみると、「島のり」とは、岩場に自生する海苔のことで、人の手で一枚一枚丁寧に剥がしてつくるそう。
「おにぎり」は日本人の馴染みの食だけれど、この劇的な出会いをまだ味わった人に是非味わってもらいたい。少し高価だと聞くけどお店で出したい。
早速良い収穫があったと、うきうき気分で終わった一日目。
翌朝、東京の神楽坂店へ連絡するついでに、素晴らしい「島のり」との出会いについて、電話に出た代表の佐藤さんに報告する。
「それってもしかして、『岩のり』のことじゃないかな。隠岐にもあって、本当に高価で島でもなかなか手に入らない貴重な食材なんだ。」
私にとって、メニューを企画し、価格設定をして提供をするというのは初めての経験でした。いくら良いと思ったものも、島内において希少で貴重だったり、鮮度と輸送の問題があったり。一つの食材の提供についても、多くのことを考慮しなければならないものなのだということを初めて肌で感じました。ただ、この食材を神楽坂でも出してみたい、という夢見る勇気だけはいつも持ち続けよう、と自分を励ましました。
現実を思い知り、島最初の衝撃の味を神楽坂に持ち帰ることは泣く泣く断念し、
私は次に泊めていただく約束をしていた「利尻らーめん味楽」さんのお宅に向けて出発しました。
【島のお店のご紹介】
利尻島 やきとり・もつ鍋・地酒のお店 月
http://tsukirishiri.wixsite.com/tsuki
利尻島にお立ちよりの際は是非どうぞ!
文 辻原 真由紀
写真 幸 秀和