2016年11月11日
行商日記
行商日記 第28回
キッチンカーで販売をスタートしてから1週間。
勝どき&神田の路地裏は全戦全敗で、日ごとに自分の精神が
ガラガラと音を立てて崩壊していくのが分かりました。
モノを販売したことがある方ならば、ぼくの気持ちを理解して
頂けるかもしれませんが、「売れない→自分が悪い→自己否定」という
泥沼のような負のスパイラルに陥ってしまいます。
20時間働いて1日の売り上げが1500円という日もあり、
このままキッチンカーで何処かに逃げようかと何度も思いました。
とはいえ、このまま負のスパイラルに飲み込まれるのも癪だし、
生産者さんの顔を思い浮かべると、このまま負け戦を続けるのは
嫌だなと何度も深呼吸をして、畳を新しく入れ替えるように
自分の気持ちをきれいに整え、頭をクリアにして戦略を練りはじめました。
まず、ぼくは「どうしたらモノが売れるのか?」という命題について考察を始めます。
「販売している商品の情報を人々に伝えること」
「ここで販売しているんだよという販売場所の認知」
「商品の魅力化と費用対効果(お得感?)の追究」などなど。
現状、島の食材は良いものを使用しているので、
あとはシンプルに「広告」に特化した動きをすればよいと結論を下しました。
最近でこそSNSやYouTubeなど、広告の様相も変化を見せはじめてきていますが、
当時はまだテレビCMや雑誌広告やチラシなどが広告の大半を占めていました。
とはいえ、キッチンカーでの販売に高額な広告費用をかけられる訳もなく、
とにかく、人の多い場所に出店をして、のぼりをたくさん立てる戦術を選択します。
そして、ぼくは出店場所として「イベント」に特化して探し始めました。
イベントは人が多いし、ご飯を食べる場所に困っている人もたくさんいるだろう、と。
場所を探し始めて数日で、赤坂サカスで販売することが決まりました。
日曜日の親子連れのイベントがある場所での販売でした。
そして、運命の日曜日を迎えます。
カラフルな風船が散りばめられた華やかな会場にぼくは離島キッチン号と訪れました。
文 佐藤 喬
写真 幸 秀和