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2016年03月31日

行商日記

行商日記 第12回

海士町観光協会には二人の「青山」がいます。

一人は北海道出身で、好青年の青山くん。
もう一人は、海士町役場の課長さんで、観光協会の事務局長を兼務している青山さん。

観光協会勤務初日の4月1日、辞令をいただいた後、
ぼくは上司にあたる青山さんと一緒に車に乗り、海士町を案内して頂きました。
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車の中で、ぼくは青山さんから島の現状について色々と話を伺いました。

島への観光客が右肩下がりで減ってきていること。
旅館のおかみさんの高齢化が進み、宿を閉める件数が増えていること。
公共事業が減り、町全体で稼いでいかなくてはいけないこと。

現状だけを見ると気持ちが暗くなりそうなことが多いですが、
役場の職員の方々が給料をカットして移住者を募る資金に充てていた話や、
ソニーやトヨタなどの大企業を辞めて移住してきた若者がいる話など、
明るい要素もたくさんある島だな、と感じました。

そして、行商について今後のビジョンを伺いました。

「実際のところ、行商って何をやるんですか?」

青山さんはハンドルを握りながら、ぼくの顔をチラリと見ました。
そして、ニヤリと意味深な笑みを浮かべ、こう言いました。

「それは君が決めることでしょう」

この言葉を聞いた瞬間、ぼくはパーッと視界が開けるような感覚にとらわれました。
海に立ち込めた暗雲から一筋の光が差し込み、
海面がキラキラと輝くような爽快な感覚。
宝船が水平線から現れ、天女や鯛やヒラメの舞い踊りが頭の中に繰り広げられました。

そして、ぼくは青山さんに「ありがとうございます」と丁寧にお辞儀しました。

やがて、車は保々見という地区に到着。
ここは、かつて岩がき「春香」とはじめて出会った思い出深い地で、
ぼくは1ヶ月間ほど、岩がきの生産現場で研修を行うことになりました。

よく分からないけれど、何となくワクワク。それが行商人初日の感想でした。

文 佐藤 喬
写真 幸 秀和