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2017年07月01日

移住入門

移住入門 第12回

遠くに見える船はまるで止まっているように見えます。
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小さいときは空遠くに飛ぶ飛行機を見るのが好きでした。
「あの飛行機進んでいるのかな」と感じるくらい遠い空を飛んでいる飛行機です。

そしてそれと同じくらい海を行き交う船をぼっーと眺めるのが好きです。
海路の大動脈を成してるこの海は、右から左、左から右へと貨物船や漁船やら多種多様なたくさんの船が行き交います。
船は速度が遅い分ちょっと遠い所高い所から海を見下ろせば、
本当に止まっているじゃないかなってくらい不思議な光景です。
絵のような風景を眺めている時間は至福なひと時です。

さて、島って時間がゆっくりと流れているイメージがありませんか。
生活にも慣れ色んな余裕が生まれた今日この頃、
この時間感覚を意識するようになりました。

都会の高層ビルみたいに太陽を遮るものがないので、
1日をかけてゆっくり昇っては沈んでいることを実感します。
渋谷のスクランブル交差点のように常に車、人がひっきりなしに動くことはなく、
目で追うものが少ないのでなにかとゆっくりと感じます。
分刻みで運行する電車に合わせて予定を組む必要もなく、
ここではあんまり時計も見ることなく時間を意識することが多くはありません。

都会での生活に慣れ親しんできた分、余計に強く感じるのかも知れません。
自然との距離感の近さを感じながら過ごす毎日です。

たまには見るものやること何もかもが常に動いている日々があってもいいかもしれませんが。今日も朝日が昇り、夜風と月夜がなんとも綺麗な島の一日です。

つづく。

2017年06月21日

移住入門

移住入門 第11回

この週末は小豆島を離れ、瀬戸内海に浮かぶ別の島に行ってきました。
その島の名前は六島(むしま)。
岡山県最南端に位置する六島は、岡山県笠岡市の港から海上タクシーに乗ると40分ほどで到着します。

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その日は、島の休耕地に水仙の球根を植えるボランティアツアーの
「水仙植えるカムツアー」に参加しました。
六島は灯台と水仙の島とよく言われます。
瀬戸内海を横断する大型船を一望できる場所にある六島灯台と、
その周りに咲き誇る水仙の可憐の姿はなんとも美しいものです。
これらの水仙は、島の人を中心に島外ボランティアも加わって植え付けが行われた球根が花を咲かせます。

さて、私にとってこの六島は特別な思い入れがある島です。
話は学生時代に遡るのですが、春の長期休暇の時にこの島で行われたインターシップに
1か月ほど参加したことがありました。

以前の記事にも書いたように
某自動車会社の小豆島がロケ地のコマーシャルを見た大学入学当初よりそれとなく、
「将来は瀬戸内海の島でのんびりと暮らしたい」
というような想いをもっていました。
そんな想いで瀬戸内海へは何度か旅行で訪ねていたのですが、
観光で見るのと実際に住むとでは違うはず。
「実際にそこでの暮らしはどうなんだろう」と思った時に出会ったのが、
このインターンシップです。

私にとっての瀬戸内海はただただ美しいものだと思っていました。
ですが、実際には高齢化などによる医療、福祉の問題や少子化による教育の問題、
後継者不足による休耕地や空き家の増加の問題など
インターンシップを通じて実際に島の人と生活を共にすることで、
様々なものを抱えている島の現状を知りました。
表面的なものばかり見ていた私は、
来る前にもっていた理想と実際に来て見て知った現実とのギャップに悩みます。

ただその中で、島の人のやさしさや島への愛情に触れることで、
将来的にただ単に島でのんびり過ごすというよりかは、
実際に島が直面している問題に携わり、
島の人と一緒に考えていきたいという想いが芽生えてきました。

そういったわけでその後は芽生えた想いをもとに数々の事を経て、
今現在は島に住んで働いています。

そんな六島ですが無事に小豆島への移住を果たし、
前より色んな意味で近い存在となったわけではありますが、
これから様々な形で関わっていけたらいいなと思います。

つづく。

2017年06月17日

移住入門

移住入門 第10回

それは、夏を告げる風物詩であります。
およそ一週間ともいわれる儚い命は、お互いを呼び寄せるために光を灯すそうです。
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小豆島ではホタルの見ごろを迎えました。
前回の記事の最後にちょっこと書いた棚田が美しい中山や、
小豆島で一番大きなダムである吉田ダムの周辺でホタルを見ることできました。
都会のネオン街を見て育ってきた私はホタルを見た記憶がほとんどなく、
そもそも見た事実すら忘れかけているくらいホタルとは縁のない22年間を過ごしてきました。なので、今回見たホタルは生まれて初めて見るような感覚でした。

中山と吉田ダムの周辺のそれぞれでホタルを見たのですが、
吉田ダムの周辺ではホタル祭りという祭りと合わせて見ることができました。

このホタル祭り「ホタルの写真を少しばかり撮りに行こうかな」
というような軽い気持ちで行ったのですが、会場に着くとびっくり。
車はすでに数百台は停まっており、お客さんの数もざっと数千人くらいで、
移住して以来一番の人込みを感じるほど、沢山の人で賑わっていました。

野外フェス顔負けなステージが設けられ、
地元の人のバンド演奏やダンススクール生によるダンスの披露。
また出店も豊富に揃っており、ビールから焼き鳥、フランクフルト、かき氷など。
よくあるような夏祭りの感じだと思います。
ただ、やっぱり島である分、自然との距離が断然近いのです。
周りを遮るような建物も、ビル群の灯りもない。
海がすぐ近くにあって、背景には山がある。
これらの自然は祭りには映えるのです。

肝心のホタルも素敵なものでした。
地元の人の会によって大切に飼育されているホタルですが、
今まで見てきたネオン街と比べたらほんのわずかな光ではあります。
ただそのわずかな光が描く曲線はなんとも幻想的なものでした。

これから本格的な夏の時期に入ると小豆島では毎週のようにどこかでお祭りが行われるそうですが、それが楽しみでなりません。
休みの日が何とも楽しい小豆島での生活です。

つづく。

2017年06月17日

行商日記

行商日記 第33回

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NHKの取材当日、中目黒の空は重たそうな雲に覆われていました。
朝の駅前はスーツ姿の方であふれていて、歩くスピードがとても速く感じられます。

離島キッチンが中目黒で販売するのは今回がはじめて。

休日のイベント会場であれば、キッチンカーも居心地が良さそうなのですが、
平日の都心だと、ガソリンの代わりに栄養ドリンクを補給させてあげたくなります。

数年前に隣の駅の祐天寺に住んでいたことがあったのですが、
その時よりも行き交う人々が心なしか冷たい表情に見えたのは、
生まれてはじめての撮影にナーバスになっていたからでしょう。

「佐藤さん、売れるといいですね」とNHKのディレクターさんの笑顔。

緊張しているぼくを和らげてくれるやさしい言葉も、
売れなかったらどうしようというプレッシャーに意識変換されてしまい、
ぼくは蚊の鳴くような声で「はい」と答えました。

昼の11時30分販売スタート、と同時にお盆をひっくり返したかのような雨、雨、雨。

傘をさしていてもびしょ濡れになるような大雨に、
「お前なんか取材される価値はないんだ」という天の声を聞いたような気がしました。

とはいえ、NHKのディレクターさんが段々悲しそうな表情に変わってきたので、
この時ばかりは一人でも良いからお客さまに購入していただき、
販売の風景をカメラに収めさせてあげたいというボランティア精神が芽生えてきます。

そして、ぼくは、傘もささずにびしょ濡れになりショップカードを配りはじめました。
行き交う人は、タオルでも配っているのかと勘違いして「なあんだ」とカードをその場で捨ててしまう方もいらっしゃいました。冷たい雨、雨、雨、雨。

そんな折、島根出身のご年輩の女性がぼくに小さなハンドタオルをくれました

「隠岐から来たの?この雨じゃ大変ね。ひとつもらおうかしら」

捨てる神あれば、拾う神あり。
ぼくはこの瞬間、人生の真理を垣間見たような気がしました。

「ありがとうございます!少々お待ち下さい」

取材陣もホッとしたような表情で、素早いカメラワークを披露しはじめ、
その甲斐あってか、次第にキッチンカーに人が集まりはじめました。

販売と撮影がうまく回りはじめ、ホッと一息つこうとした瞬間、
すこし離れたところで強面の男性が、ぼくをジッとにらんでいました。

文 佐藤 喬
写真 幸 秀和

2017年06月07日

行商日記

行商日記 第32回

スーツ姿の女性がこちらに向かって歩いてきました。

女性の靴はヒールではなく、ペタンコのスニーカーのようなもので、
OLというよりは、ベテランの保険外交員のような雰囲気の方でした。

「離島キッチンの方ですか?」
「···はい」とぼくは多少の戸惑いを感じつつ答えます。
「NHKのディレクターをしているSと申します」

Sさんは番組名が印刷された名刺をぼくに渡してくれました。

「夕方のニュース番組なのですが、取材をさせて頂きたくて」
「今からですか?」
「いえいえ、後日、日を改めまして取材させて頂けたらと」

過去32年間の人生でテレビに映った経験はゼロ。

それにしても、赤坂サカスなんだからTBSの番組ならまだしも、
どうしてNHKのディレクターが赤坂サカスにいるんだろう?

ぼくは一瞬そんな疑問を頭に思い浮かべましたが、
まあ、そういうこともあるだろうなとすぐにその疑問を払拭しました。

「取材ですね、大丈夫ですよ」とぼくは答えました。
「ありがとうございます、また後で連絡させてください」
とSさんは答えて去っていきました。

ぼくの横では喜界島のNさんが不思議そうな表情でやりとりを眺めています。
もしかしたら「取材詐欺」みたいな都会の新しい詐欺にぼくが引っ掛かるのではと
不安に思っていたかもしれません。

喜界島のNさんが「じゃ、行きますか?」
とビールのジョッキを傾ける仕草をしました。
ぼくは「行こう、行こう」と両手にビールのジョッキを持ち、
ビールを浴びる仕草をしました。

Nさんと楽しい宴を終えた翌日、ディレクターのSさんから電話がきました。
取材は、一週間後の中目黒の駅前で販売している風景を撮ることに決定。

そして、撮影当日。

生まれてはじめての撮影で緊張しているぼくに、
予期せぬアクシデントが次々と襲いかかってきました。

文 佐藤 喬

2017年06月07日

移住入門

移住入門 第9回

つい先日、小豆島ではとある花の開花が見頃を迎えました。

初めて見たその花は、まるで小さな目玉焼きのような花でした。
小豆島といえば、オリーブ。
そうです、オリーブの花が咲きました。DSC_0040

香川県花、香川県木でもあって、前回のオリーブマラソンのように、何か名前が付くのであればオリーブ○○と名がつくように何をとってもオリーブの島なのです。
小豆島の代名詞でもあるオリーブは島の至るところで見ることが出来ます。
オリーブ農家の農園や、個人宅の庭木、また街路樹まで。

そもそも、なぜ小豆島がオリーブで有名なのか。
もともと地中海が原産のオリーブですが、
日本に初めてオリーブが持ち込まれたのは1593年。
長崎県・平戸に渡航したイエズス会の南蛮渡来の献上品の中に、
オリーブの新漬けがあったそうです。
その後は薬用目的などで幾度と持ち込まれるようになったオリーブですが、
本格的に栽培がおこなわれるようになったのは日露戦争後。
日露戦争に勝利した日本は広大な漁場を確保し、
そこで水揚げされた魚の保存や輸送手段が検討されました。
その中で西欧諸国にて行われているオリーブオイル漬けする方法が挙げられ、
オリーブの国内自給のため栽培計画が国策として取り組まれたのです。
1908年に三重、和歌山、香川の三県で試験栽培が行われ、
そして唯一栽培に成功したのが香川県であって小豆島でした。
その後、栽培面積を拡大していき今日のオリーブの島となったわけです。

「景観は地域活動のストックだ」
と私の学生時代の指導教員は仰っていたことをふと思い出したのですが、
今日の島の至る所にあるオリーブの景色は、
小豆島の地とそこに住む人が共に歩んで来た素敵な景色だと改めて感じました。

成長の一過程でありますが、花が咲いて身をつける。
今まではそんなに意識したことはなかったのですが、
島じゅうにあるオリーブについつい目が向いては、様子が気になってしまいます。
銀色の葉にたわわに実る果実をつける、秋の収穫期が楽しみです。

つづく。

2017年06月07日

献立紹介

【大名筍(焼き)】鹿児島県・三島村(竹島)

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非常にアクが少なく、獲れたては生でも食べられる程。
その昔、薩摩藩の殿様(大名)しか食べられないほど貴重だったことから、
この名前がついたといわれています。
学名は「リュウキュウチク」と呼ばれ五〜六月が旬です。
今回は島全体を竹林が覆う、竹島の旬の筍をご用意しました。

文 辻原 真由紀
写真 幸 秀和

2017年06月07日

献立紹介

【ボタンボウフウの天ぷら】 鹿児島県・三島村(竹島)

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一年を通して三島村でよく食される料理です。
自生のボタンボウフウは島内のいたるところで見つけることができ、島の人たちはそれぞれ、とっておきの調達場所を知っています。
体質改善に効果のある栄養素を豊富に含むため、
「命を長らえる草=長命草(ちょうめいそう)」とも呼ばれます。
島の方おすすめの風味豊かな新芽をお召し上がりください。

文 辻原 真由紀
写真 幸 秀和

2017年06月07日

献立紹介

【地魚スモークのポテトサラダ】 鹿児島県・三島村(硫黄島)

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三島村には、本州で獲れる魚の南限と、南西諸島で獲れる魚の北限が重なる豊かな漁場があります。硫黄島産のニザダイを、丸一日かけて燻し上げました。
三島村名産、椿の実の殻を燻製チップに使った香り深い味わいは、
ビールに良く合います。

文 辻原 真由紀
写真 幸 秀和

2017年06月07日

献立紹介

【焼酎みしま村 黒麹仕込み】鹿児島県・三島村(黒島)

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黒島産のカライモ(サツマイモ)を使った三島村島内でしか購入できない芋焼酎。
さらっとしてクセがなく口当たりがまろやかです。
三島村の料理と一緒に是非お楽しみください。

文 辻原 真由紀
写真 幸 秀和