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2017年07月14日

離島入門

離島入門 第19回 食材探しの旅 利尻島11

私は学生の時、美術史を学んでいたのですが、
その中に「ディスクリプション」の練習というのがありました。

「ディスクリプション」とは、description=説明する、という意味で、ひとつの作品、たとえば絵画なら、そこに描かれているものの形や色や配置をすべて言葉で説明する、というものです。絵画をひとつひとつ言葉に直していくと、計算された構図に気づいたり、作者の作品の傾向が浮かび上がってきたりして、
ただ何となく作品を見るよりも新しい発見や感動があり楽しいです。

利尻島の「愛す利尻山」は、まさにこの「ディスクリプション」をしたくなるアイス。
以下、アイスを想像しながらお楽しみください。

紙のカップの中には先ず、つややかな白色のソフトクリーム。
その上には乾燥ウニがひとつ。そのウニを山頂に、山の片側の袖にはクランチのようにも見える乾燥ウニのパウダーが雪のように降り積もります。
その反対側にはうすい昆布と、平川さん手作りの昆布からつくったお塩。
最後にインパクトなのが、なんと乾燥昆布で作ったスプーンで、
口に入れる部分は丸く平たく、取っ手の部分は昆布をねじって作ってあります。

食べ方の丁寧な説明をひとしきり伺った後、
その通りに震える手でまずは乾燥ウニを一口、昆布スプーンでアイスをすくいます。

「!!」

一見、本当に合うの?と思ってしまう、昆布・ウニとアイスクリーム。
しかも利尻の名産の食材を使っていると、キャッチーさを狙ったのでは?と思われがちなのですが、そんなことはないのだと一口で納得できます。乾燥ウニは味が凝縮され生臭さがなく、食感もソフトクリームとあいます。また、昆布の旨味がアイス全体の個性となって前に出すぎることもなく、アイスを立てつつ縁の下の力持ち的な役割を果たしておりしみじみ感動します。まさに、食材と食材の相性を計算してつくられたアイス。
しかもそれらの食材が利尻の名産。なんということでしょう。平川さん、さすが!
また、アイスを食べ終わったあとはスプーンの昆布も食べてしまうことができるとは、遊び心も満載だ。

「……」

上記のディスクリプションを延々無言で心の中で繰り返す私を温かくおもてなししてくださった平川さん。

あ、そうだこれは仕事だ! アイスで一瞬忘却の彼方に行っていた「仕事」の二文字が戻ってきます。アイスをいただきながら、商品のアイデアを食材メモしていきます。


昆布から作ったお塩。
昆布に海水を付け何度も干すことで作ったお塩。この作り方で平川さんは特許を取得。昆布の旨味が凝縮されており、水に溶かして混ぜると粘りが生まれるのでドレッシングとしても使える。また、アイスにかけても甘味と旨味が引き立ち美味。

子育てなどお忙しい中「特許をいつか自分でとって、商品をつくりたい!」という思いで、ご自身ならではの発想で次々とつくられる商品には素敵な夢がつまっていて、
忙しくてもやろうと思ったことはできるんだ、ということをまさに示していらっしゃる方です。

もし、また利尻に来ることがあったら必ず食べに来たいアイスと同時に、
利尻に来ることがあったら必ずお会いしたい方に出会えました。

愛す利尻山
【お店と商品の情報】
北りん道 さん
住所: 〒097-0401 北海道利尻郡利尻町沓形字富士見町136番地134番地 利尻にお立ちよりの際は是非行ってみてください!

写真 文
辻原 真由紀

2017年07月14日

移住入門

移住入門 第14回

DSC_0004
小豆島へ来てからは、何かと規則正しい生活が送れています。

私は農業関係のお仕事に就いています。
そのため、基本的には太陽が昇っている明るいうちは仕事があるのですが、
そうではなくなるともう家についています。
出社する時間は皆さんよりもちょっと早いのですが、終業は午後4時とか5時なのです。
その影響で朝が早いので夜は早めに寝て、早寝早起きの実践者となりました。
ちなみに、学生時代は毎日のように日が変わってから寝る生活も一転、
小豆島へ来てからは、起きていて日が変わるようなこと一度ありません。

そんな規則正しい小豆島での生活ですが、私の中で大切にしている時間があります。
それは、仕事が終わってからの時間です。

島の人は会社のスポーツクラブで活動したり、習い事であったり、
サイクリングしたり、夜景を撮りに行ったり。そんな過ごし方があるそうです。
特に会社のスポーツクラブに関しては盛んなようで、
島の企業同士で頻繁に試合を行なっているみたいです。

そして私自身もいろんな過ごし方をしています。

例えば、温泉。
小豆島には温泉がいくつかあります。
屋外での仕事が終わって汗がだくだくの中、職場から直行で温泉へ行き、
明るいうちから湯船に浸かれるのは至上のひとときです。
よく行く温泉には露天風呂が設置されており、目の前には瀬戸内海の絶景、
まるで水墨画のような景色が広がります。

他には、ボルダリング。
今年に入って誕生したボルダリングの施設は、体を動かすのに最適な場所です。
夜の10時まで空いているので仕事終わりでも十分に遊ぶことができます。
小豆島には自然の岩でボルダリングが出来る場所があるそうで、
そこへ行くことを目指して屋内で日々特訓中です。

極め付けはBBQ。
これは島の常識なのかそれともたまたま誘ってくれる人がBBQ好きなのかはわかりませんが、こっちにきて4度も経験しています。
徒歩圏内に海があり、砂浜でBBQしながら夕暮れの海を眺めるのも良い時間です。
島へ来る前に思い描いていた島暮らしと重なる部分があり、
とても満足している島暮らしです。
今度は釣りに挑戦したいなと思う、今日この頃。

いい島です、小豆島。

つづく。

2017年07月14日

離島入門

離島入門 第18回 食材探しの旅 利尻島10

旅に出たい、と思う時、皆さんはどんなきっかけを持つでしょうか。

人によって様々ないきさつや理由があると思いますが、「アレが食べたい!」というのも一つの大きな動機になります。そういう時決まって「アレ」というのは普段食べられない何か。その土地の郷土料理だったり、地元ならではの食材を使っていたり。

利尻で私が目指した「アレ」とは「北利ん道」というお店の「愛す利尻山」。
ウニと昆布を使ったアイスクリーム。
最初に聞いたとき、さすがの私もその組み合わせに怯んだほど。
しかし、食べた方々は口々に「アイスとウニと昆布が合う!」「見事なマッチング」 とインターネットにも書き連ねている。北の島でアイスの革命が起こっているのかもしれないので、行かなければという使命感でお店を目指します。

お店はすぐに分かりました。中を覗き込んでみると、沢山のお客さまの中にエプロンをした女性がひとり。その方こそ、このアイスをつくられている平川さんでした。
主婦の平川さんは、様々なアイデアで特許をとり商品開発をされているというインタビュー記事を見たことがありました。私がお店に入ると、忙しそうにも関わらず、
笑顔で「いらっしゃいませ」と声をかけてくれました。

一通り店内の品物を見て、お客さまで忙しそうだったので、ちょっと時間の経ったころに来よう、と私は一旦お店を出ることにしました。

離島キッチンに関わり始めて、飲食店を「お客さま」目線と同時に「お店側」目線で見るようになっていました。混み合うとき忙しさとか、高揚感も感じながら、お客さまとして完全にお店を味わえているかは分からないけれど、一つの物事を別の側面から見ることで少し世界が広がった気がします。

しばしの間島内を散歩してお店に戻ってみると、店内では平川さんおひとりで作業をされていました。

「さっきはごめんなさいね~バタバタしていて。」

私はついに念願のあのアイスの名前を口にしました。

「『愛す利尻山』をください。」

北利ん道

写真 文
辻原 真由紀

2017年07月05日

行商日記

行商日記 第34回

中目黒での販売とNHKの撮影がうまく回りはじめ、ホッと一息つこうとした瞬間、
すこし離れたところで強面の男性が、ぼくをジッとにらんでいました。

男性は、ライオンが獲物を狙うかのごとく、ゆるやかに近づいてきます。
テレビの取材陣に気後れすることもなく、ゆっくりとゆっくりと。
カメラマンも男性に気付いたのですが、男性の異様な佇まいにカメラを下ろしました。

「おい、俺を撮影するんじゃねえぞ。兄ちゃん、誰の許可でここで販売してんだ?」
「土地の所有者を通じて、10時から15時までここを借りているのですが」
「営業許可は持ってんのか?おおうっ?」と明らかに恫喝モード。

見た目はとても怖い感じの男性だったのですが、
ぼくは上手く回りはじめた販売と撮影を崩されたことによる怒りのアドレナリンが、
徐々に身体中にめぐるのを感じていました。

「ちょっと待っててくださいね。今、書類をお持ちしますから」

ぼくは販売に必要な営業許可証、土地のレンタルの契約書、衛生管理責任者証明書、
さらには火に油を注ぐためにTSUTAYAカードもそっと添えて、男性にお渡ししました。

男性は書類を手に取り、TSUTAYAカードに関しては首をかしげていましたが、
販売に必要な書類はすべて揃っていると観念したのか、急にトーンを下げてきました。

「悪かったな、兄ちゃん。ちょっと様子を見るように頼まれてよ」
「誰からですか?」
「近所の店だよ。飲食店にも縄張りってのがあるのよ。うちらの商売と同じで」
「うちらの商売って何ですか?」
「何の商売だと思う?」
「ファンシーグッズの販売ですか?」
「わはは、まあ、似たようなもんだ」

強面の男性は「じゃあな」と再びゆっくりとゆっくりと来た道を戻っていきました。
ぼくは、ふぅーっと深く長いため息をつき、1年分の疲れが身体に溜まったような気がしました。

「大丈夫ですか、佐藤さん」とNHKのディレクター。
「ええ、よくあることです」とぼくは慣れた感じで答えました。
本当は初めてだったけど。

どしゃ降りの雨も強面の男性が去ってからすぐにやみ、
空には一筋の光がこぼれるように差し込んできました。

そして放送日までの3日間、ぼくはなかなか身体の疲れを抜くことができませんでした。

文 佐藤 喬

2017年07月05日

移住入門

移住入門 第13回

小豆島に来て楽しみにしていたことがつい先日行われました。
松明の灯りと鮮やかな緑色の苗が夕陽に映える、虫送りです。DSC_0123

農作物の害虫除けや豊作を願って古くから日本各地で行われてきた虫送りですが、
小豆島が舞台となった「八日目の蝉」のワンシーンで登場したその様子を画面越しで見て以来、いつか実際に自分の目で見てみたいという想いがありました。

ちなみにこの写真は小豆島の肥土山地区で行われたもので、
7月8日には中山地区で虫送りが行われます。
ご都合よろしければ、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

島と言えば大きさや地形、気候にもよりますが私の中で山か海かと問われれば海寄りのイメージがあったので、
海よりも断然山寄りのイメージがある棚田の風景が島で見ることができるのはちょっと不思議な感覚でありました。

でも実際には色んな島でお米は生産されており、
有名どころだと朱鷺と暮らす郷のお米を生産している佐渡島。
私自身が実際に見たことがあるのが豊島(香川県)と中ノ島(島根県海士町)です。

豊島の田んぼは山の地形沿って緻密に切り崩した棚田で、棚田の先には海が広がっており棚田全体の大きさなど石川県輪島の千枚田に似たようなもの感じました。

中ノ島(海士町)は、離島キッチンで使用しているお米の生産地です。
大小様々な田んぼが棚田を成しているというよりかは、
よく平地部で見るような大きくてきれいな四角形を成した田んぼであり
自給率は100%を超えるほどのお米の生産量があるとか。

他にもいろいろな島でお米が生産されているそうですが、
地形が複雑で田んぼを作るのに工夫が求められる島の棚田は、
昔の人が知恵を絞り汗水かいて作った棚田のその背景を強く感じられるので、
これからも残していきたい風景だと思います。

余談ですが個人的に見てみたい島の棚田があるのですが、
それは山口県祝島の「平さんの棚田」です。
30年かけて築いた棚田は高さが5メートルを超えるほどの石垣が何段もあって、
真下には青い海が広がり天空に浮かでいるかのように感じられるそうです。

いつか、島の棚田○○選を作ってもいいかもしれませんね。

つづく。

2017年07月01日

お知らせ

【営業時間のお知らせ】

「神楽坂店」〜今月の島 長崎県・小値賀島〜
7月17日(月)11:30〜14:00
        18:00〜22:00(L.O.21:00)
海の日(祝日)のため、ランチタイムも営業しております。

「福岡店」〜今月の島 鹿児島県・三島村〜
7月17日(月)11:30〜14:00
        18:00〜22:00(L.O.21:00)
海の日(祝日)のため、営業しております。

7月18日(火)振替休業

みなさまのご来店、お待ちしております。

2017年07月01日

献立紹介

【大根の落花生和え】長崎県・小値賀島

大根の落花生和え
小値賀島の郷土料理である大根の胡麻酢和えを、特産品である落花生ペーストの和え物にしました。風味豊かな落花生のまろやかな味わいをビールや、焼酎でお召し上がりください。

文 白戸 優太
写真 幸 秀和

2017年07月01日

献立紹介

【かあちゃんお手製ところてん】長崎県・小値賀島

小値賀のかあちゃんお手製ところてん
日に4回干し洗いを繰り返して作られるところてんは、独特の臭みがなく、すっと食べられます。
小値賀風に甘く味付けされた、だし醤油とごまだれでお召し上がりください。

文 白戸 優太
写真 幸 秀和

2017年07月01日

献立紹介

【あおさのだし巻き玉子】長崎県・小値賀島

あおさのだし巻き卵
小値賀島は遠浅な海に囲まれ、幕府に認められるほど海産物に恵まれています。
そこで採れるあおさを、だし巻き玉子に仕上げました。
口当り優しい玉子の食感と、風味の良いあおさはどんなお酒にも合います。

文 白戸 優太
写真 幸 秀和

2017年07月01日

献立紹介

【魚醤の卵かけご飯セット】長崎県・小値賀島

魚醤の卵かけ御飯
factory333で作られる魚醤は、どんな料理に入れても良い万能調味料です。
そんな縁の下の力持ちを、卵かけご飯でシンプルに。
食事の〆に是非お召し上がり下さい。

文 白戸 優太
写真 幸 秀和